※『ガールズ・ブルー』を読んでいて思いついたことです。
全てのレッテルを取り払ってしまいたい
名さえも捨ててしまいたい
全てを捨ててまっさらな状態になってみたい
「遠くへ行きたい」
瑞垣と海音寺は土手を歩いていた。
夕暮れの土手。辺りはオレンジ色に染まっていた。
途中、これまたオレンジ色に染まる空を仰ぎながら唐突に瑞垣が口にした。
「いってらっしゃい」
前を向いたまま海音寺が瑞垣の呟きに対応する。
空を仰いでいた瑞垣はゆっくり海音寺の方へと顔を向ける。
わざとらしく笑顔を作った。
「何?それだけ?ちょっと冷たいんやないの?」
見てくる瑞垣にチラリと一瞬だけ視線を送り、再び前を見た。
「じゃぁ聞いてやるよ。何で遠くへ行きたいんじゃ」
視線を海音寺から外す。瑞垣もまた前を向いた。そして呟くように答える。
「自由になるため」
答えを聞き、海音寺は溜息をついた。
「そんなことだろうと思った」
「あらあら。一希くんには俊二くんのことがお見通しなのね。そんなにも分かっててもらえるなんて俊二くん嬉しい」
心にもないことをと海音寺は思った。
そう思った通り、瑞垣は口調こそ軽かったが、目は少しも笑っていなかった。
「で」
瑞垣が海音寺の顔を覗きこむ。
二人は土手を歩く足を止めた。
「俺も一緒に行くとか可愛いこと言ってくれへんの?」
言いながら瑞垣は海音寺の前に立つ。
夕焼けを背にして緩く微笑む瑞垣を海音寺は綺麗だなと頭の片隅で思った。
「なんでそんなこと言わないかんのじゃ」
「恋人が遠くに行ってまう危機なんやで?それなら嘘でも言うやろ。近くにいたいとか思わんのか」
「言わんし思わん」
「本当、今日の一希くんは冷たいわ」
わざとらしく肩をすくめ溜息をつく。
「近くにおるばっかが良いことでもないじゃろ」
外していた視線を海音寺に向ける。真っ直ぐ自分を見る目線とぶつかった。
「それに瑞垣の場合、自由になる為に遠くに行くんじゃろ。なら、俺は邪魔じゃねぇか。俺がいたら瑞垣は完全に自由になれんからな。それ、意味ないじゃろ」
己の前に立つ瑞垣の脇をすり抜け、海音寺が足を進める。
数歩進んだところで止まり、くるりと振り返った。
「だからな、そういう理由で瑞垣が遠くへ行くなら俺は待つ。瑞垣が自由を堪能して、俺達の知る瑞垣俊二に戻りたいと思ってここに帰って来た時、俺が最初にお帰りなさいって言うんじゃ。俺が瑞垣を元の世界に戻す役目をする」
それこそ恋人の役目ってもんじゃろと言って海音寺は笑った。
振り返った時と同じようにくるりと踵を返すと、海音寺は歩き出した。
瑞垣もまた一度空に向かって息を吐き出すと、足を踏み出した。
追いつき、隣に並べば、海音寺が笑顔を向ける。
「でも、ただの旅行って言うんなら俺も行く。一緒の時間、共有したいじゃろ」
そう言った海音寺の頬が僅かに赤かったのは夕日の為ではないだろうと瑞垣は思った。
全てを、名さえも捨てて自由になれたら快感だ
だが、その快感は強すぎてずっと味わっていることは出来ない
だから戻る
もう一度名を手に入れ
レッテルも貼り付けられ
元の世界に戻るのだ
※あー意味不明ですみません;;
近くでもいいです。誰も自分の知らないところに行くということは、自分に貼り付けられたイメージも、名さえも捨てれることだと思ったのです。なんとなく。
一人旅を経験した時に思ったのですが、自分は今自由だと。
えっと、電車の時間などに縛られているので、完璧な自由ではありませんが、けど、旅先の地に自分を知るものはいなくて、自分を評価する人もいなくて、自由なんだと思ったんですね。
それって凄く楽しいんですけど、同時に孤独もあるわけです。そんでホームシックになると(笑)
旅先から帰る時は寂しくもありますが、地元に帰ってきた瞬間はほっとします。自分の世界に返ってきたんだって。
レッテルを貼られるとか他人から勝手に評価されるとかウザイけれど、それから一度離れても結局は戻るんだよなといいたかっただけですが、非常に分かりづらいですね(苦笑)
ていうか、私は現実逃避で今、遠くへ行きたいです。
…岡山行きたい。
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