友情が愛情に変わった瞬間なんて分からない。
気づいた時にはもうそれは友情を越していた。
否、友情が愛情に変わったわけではない。
俺の中に友情は確かにまだ存在している。
変わったのではない、生まれたのだ。
俺の中に新しく芽生えた感情。
おそらく、種は出会ったときに植え付けられ、ゆっくりと芽を出した。
それは今、俺の中に強く根を張り芽吹いている。
順調良く成長する。
友情を抱え込み、それは成長する。
それが為に生まれる欲望。
手に入れたい。
自分のものにしたい。
心も身体も。
触れて、存在をより感じたい。
そう思ってしまう俺は友人としてもう失格なのかもしれない。
けれど、日に日に成長するものを止める術など俺にはまだ分からないんだ。
「磯部?」
その声で思考の渦から引き戻される。
パパイアを抱き、海音寺が黙りこくっていた俺を覗き込むように見てきていた。
「どうしたんじゃ?急に黙って。何かぼーっとしとるし」
「あっ、すまん。で?なんじゃった?」
海音寺から不審を除かせるように笑顔を向ければ、こちらにも笑顔が返ってきた。
その笑顔にドキリとする。そして同時に焦燥感に駆られる。
海音寺が俺に向ける笑顔は友情のもの。俺の抱く感情とは別のもの。
笑顔が向けられのが嫌なわけではない。ただ、物足りないのだ。それ以上を俺は望んでしまっている。
海音寺が顔の横にまでパパイアを持ち上げる。
「だから、こいつの何処が俺に似とるんじゃ」
似てなんかおらんのうと言いながらパパイヤの額と自分の額とをくっつけた。
持ち上げていたのを降ろせば、パパイアは海音寺の手から逃れるように走り出す。
「あっ」と言って海音寺が手を伸ばす。
手を伸ばしたために海音寺の身体が俺の方に傾く。
パパイアは俺の横を通り過ぎていった。
チリンチリンと首に付けた鈴の音が聞こえた。その鈴の音が頭に響く。大きく俺の中で響いた。
一瞬、鈴の音に導かれるように俺の思考は引っ張られた。
「えっ?」
思考が戻ってくる。
海音寺が訳が分からないといったように俺の下から視線を送る。
俺は腕を掴み、海音寺を床に押し倒していた。
掴んだ腕から体温が伝わる。
「磯部?」
見上げ、海音寺が俺の名を呼んだ。
それに呼応するかのように腕を掴んだ手に力が入る。
海音寺が僅かに顔を歪めた。一度俺から視線がそれた。
次に向けられた瞳は、不安からか揺れていた。
俺の見たことのない瞳。ドクンと心臓が高鳴った。
「……悠哉…」
感情が成長する。
一人歩きをする。
それを止める術を俺は知らない。
「一希…」
止められない感情は感情のままに動き出す。
※この後磯部さんがどうしたかは分かりま宣言。
①我に返りすぐ手を離す。でもチューくらいしとけばよかったと後悔。
②顔を近づけたところで海音寺がもう一度名を呼び、それで我に返って慌てて手を離す。
やっぱりチューくら(省略)
③勢い余って告白する。
④それこそ勢い余ってこのままおs(略)
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