※もしかしたら…と思った7組のお話。
「阿部なんか嫌いだー!!」
今日も今日とて西浦高校1年7組の教室には水谷の無様なまでの声が響き渡った。
例の如く水谷は7組教室を飛び出す。
そして、おそらく最も自分を助けてくれるだろうと思われる人物等がいる1組へと向かったに違いない。
それをクラスメイトは、密かに温かい目で見守っていた。
「あいつマジウゼーな」
舌打ちを繰り返しながら阿部は言う。
そんな阿部を花井は苦笑混じりの笑みを浮かべ見ていた。
ふと笑みを消したかと思うと、花井はそういえばと話を切り出した。
「そういえば、前から思ってたんだが…阿部もそんなウザイウザイ言うなら構わずにシカトしてればいいんじゃないか?なんだかんだで昼休みも一緒にいるし」
「あぁ?」
阿部は質問してきた花井に、半分本気の怒りを含めた視線を送る。
流石のキャプテンといえど、その視線にはたじろいだ。
チッと一度舌打ちをして、阿部は花井から視線を外した。
「あいつは視界に入ってくるだけでウザーんだよ。行動の全てがイライラする」
その言葉を聞いて花井はあぁと思った。
阿部はほっとけないのだ。水谷の事を。
三橋に対してとはまた別の意味で。
なんだかんだで阿部という奴は面倒見がいいのだ。
気になるからイライラする。
気になるから酷い言葉でも口にして水谷をどうにかしようとするのだろう。
確か…と花井は記憶をめぐらせた。
確か栄口も
「阿部は口も性格も悪いけどね、結構良い奴なんだよ」
と言っていた。今、その言葉を完全に理解したような気がする。
けどやっぱり口も性格も悪いのは損だよなぁと花井は思った。が、絶対口にはしない。
いくら、例え”口も性格も悪くても良い奴”だとしても、口や性格が悪いことには変わりないのだ。
敵に回したくないからなと花井は思った。
そうこうしていると水谷が戻ってきた。
出て行った時とはまるで別人のようにヘラヘラ顔で教室のドアを開けた。
いったい1組で何があったのか。
まぁ、水谷の事だ。栄口にでも泣きついて、それから、栄口と巣山の二人に慰めてもらったのだろう。
さすがだなと思う。よくもこんな短時間で機嫌を直した上、上機嫌に出来るものだなと感心した。
自分には到底できないことだ。
花井は1組の存在を改めて有り難く思った。
「ただいま~」
ヘラヘラ顔のまま水谷は阿部と花井に近づいた。
その水谷の表情を見た瞬間、阿部の空気が一瞬にして重いものへと変わった。
花井はマズイと思って安全圏まで離れる。
阿部がガタリと椅子から立ち上がった。
「お前…」
「何?」
「全く反省してねぇじゃねぇか!!!」
「うわ~ん!」
阿部の怒りと水谷の叫びが再び1年7組の教室に響いた。
花井は一人、はぁと深く溜息を付いた。
※阿部は水谷のこと嫌いそうだけど、花井を含めクラスでは一緒に行動してそう。
それってなんでかなぁと考えた結果こうなりました。
ちょっとわけが分からないのはご愛嬌☆(←KI・MO・I)
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