(・・・寒い)
カーテンがうっすらと輝き始める時間。
辺りが明るみ始めた頃、寒さから瑞垣の意識は夢の世界から現実へと戻された。
しかし、まだ起きるのは億劫だと感じた瑞垣は目蓋を持ち上げない。
その為、意識は夢と現実の狭間をフラフラと漂っていた。
頭は覚醒しなくとも、身体は無意識に暖を求める。
目蓋を閉じたまま、瑞垣は更に布団の奥へ潜り込んだ。
すると、布団の温かさとは別の、心地よい熱を感じた。
重い目蓋を薄っすらとあけ、それを確認する。
(あーそうか)
ゆっくりと焦点の合う視界。
その視界に映ったのは、美しい漆黒の闇にも似た髪を持つ頭。
(そういや、泊まったんやったな。忘れとったわ)
未だぼやける頭で瑞垣は普段はここに存在することのない海音寺の存在を認識した。
海音寺は瑞垣に背を向け眠っていた。
耳を澄ませば、規則正しい寝息が聞こえる。
海音寺の放つ穏やかな熱に惹かれるように瑞垣は二人の間の距離を埋めた。
触れれば、熱が伝わる。自分より少し高いその体温は丁度いい具合に温かい。
今感じる寒さをやり過ごせる上、この温かさは再び心地よい眠りに誘ってくれそうだと感じた。
瑞垣は手を伸ばし、後ろから抱きすくめるように、その身体に腕を回した。
「・・・ぅん・・・」
海音寺から声が漏れる。
起こしてしまったかと思い様子を窺うと、海音寺からは変わらず一定のリズムを刻む寝息が聞こえてきた。
安堵した後、その肩に顔を埋め、ゆっくりと目蓋を閉じた。
(ぬくいな)
寒さはもう感じない。
心地よい温度が、目蓋を閉じた瑞垣をすぐ眠りの世界に導いていった。
※最近起きると寒いからです。
私は抱き枕を抱くか、布団に包まります。そして、また寝ます。
つまり、この小ネタにおいて海音寺は瑞垣の抱き枕みたいな位置ですね。
瑞垣は体温が低いと思います。絶対海音寺の方が高い。
↓その後
意識がゆっくりと浮上する。
覚醒しきれていない意識はフワフワと漂った。
それが地に足が着くのを待ちながら寝返りを打つ。
フワフワと漂う意識の、足元がしっかりし始めた頃、緩慢な動作で目蓋を持ち上げた。
瞳はまだしっかりと視界を捉えない。
ぼーっとする意識のまま顔をあげた。
徐々に明らかになる視界。瞳が目の前のものを形を成して捉えた。
(近っ)
海音寺の眼前に現れたのは未だ眠る瑞垣の顔。
一気に頭が覚醒する。
寝起きに、綺麗に整った瑞垣の顔は刺激が強すぎると海音寺は思った。
(寝顔は案外可愛いんじゃな)
瑞垣の、無防備ともいえる表情は珍しい。
海音寺は瑞垣の顔をまじまじと見つめた。
視線が唇へと移動する。導かれるように軽く掠める程度にキスをした。
(何やっとるんじゃ、俺は)
寝ている者にキスをするなど・・・と自分のしたことが恥ずかしくなる。
それを紛らわす為、起きようと思ったとき、自分の身体に腕が回されていることに気付いた。
その腕をそっと外す。背を向け、相手を起こさないようにベッドから抜け出そうと上体を起こした瞬間、クイッと後ろに引かれた。
海音寺はバランスを崩し、そのまま再びベッドに倒れこんだ。
身体を後ろから抱きしめられる。
「いつから起きとったんじゃ」
「海音寺が寝返りを打ったところから」
「初めじゃねぇか・・・」
だとしたら・・・と思う。
(だとしたら俺がしたことを瑞垣は知っとる)
それを自覚した途端恥ずかしさが増した。
瑞垣のことだ。絶対何か言ってくるはずだ。無意識とは言え、自分のしたことを激しく後悔した。
「海音寺が熱い視線を向けてくるもんやからな。恥ずかしくて起きれんかったんや」
「よう言うわ」
相手がくすっと笑ったのを、首にかかる息で感じた。
「視線が去るのを待っとったらビックリ。チューされてもうた」
ほらやっぱりと思う。
海音寺は誤魔化すように、瑞垣の腕の中で身じろぎした。
「海音寺はいつから人の寝込みを襲うような手癖の悪い子になったんかなぁ」
「わざとらしい声出すなや。瑞垣とおったら自然そうなるわ」
くすくすと瑞垣は喉の奥で笑った。
海音寺は息を一つ吐き出し、自分を包む腕から抜け出そうとしたら、腕に力が込められ身を引かれた。
「もう起きたいんじゃけど」
「もう少し」
首元に瑞垣が顔を擦り付けてきたのが分かった。
(もう少しね・・・)
そう思いながら背中に感じる体温に意識を集中させた。
(こういう朝も偶にはいいかもしれんな)
※その後の話の方が長いことについて。
なんでやねん・・・!
緩い感じの内容が特にないものは久々に書いた感じがします。楽しかったです。
とりあえず、ありきたりなので、どこかでネタが被ってないことを祈ります。
私の記憶上では大丈夫だと思うのですが・・・。
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