音が聞こえる。
鈴の音・・・だろうか。
優しい音を奏で、ゆっくりと余韻の波紋を広げる。
繰り返し、繰り返され、酔ってしまいそうだ。
・・・違うな。もう酔わされているのかもしれない。
鈴の音以外、何も・・・聞こえない。
「・・・悠哉」
そんな俺の耳へ、一希の声が届いた。
「悠哉、ふざけるのもええ加減にせえよ。腕、離せよ。・・・どうしたんじゃ、いったい。何かおかしいぞ。なぁ」
そうだ。腕、腕・・・掴んだままだ。離してやらなくちゃ。
そう思うのに・・・ダメだ、離してなんかやれない。
俺は欲しいんだ。一希が。このまま自分のものに出来るならと思うんだ。
一希の言葉は、言葉こそ強気なのに、声音には隠しきれてない不安が見え隠れしていた。
その声音が気持ちいい。
その時、鈴の音が一層強く鳴り響いた。頭の芯を揺さぶるように鳴り続ける。
気付けば、一希の顔がすぐ目の前にあった。
俺は何をしようとしているのか。
ぼんやりとそんなことを思った。そんなこと、分かってる。聞かなくても、俺が何をしようとしているかなんて。
「悠・・・」
名を呼び、静止の声を上げようとした唇を、俺は自分の唇で塞いだ。じわりと、触れた場所から一希の体温が伝わる。
ゆっくりと目蓋をもちあげれば、いつも以上に大きく開かれた瞳とぶつかった。その瞳がふるっと揺れる。
俺と視線がぶつかったことに気付いた一希は、力任せに顔を背けた。
離された唇が、離れていった体温がまだ恋しくて、俺はその後を追う。捕まえ、もう一度口付ける。
一希の身体が強張ったのが、掴んだままの腕から伝わった。
止められない。
もっと欲しくて、もっと感じたくて、一希の唇へ舌をのばした。
瞬間、勢いよく身体を押された。
俺と一希の身体が離れる。一希はすぐさまするりと俺の下から抜け出した。
一希が抜け出したところから視線を上げれば、手で口を覆い、頬を赤く染めている一希と目が合う。
その瞳は、さっきまで不安気に揺れていた瞳とは打って変わって、精一杯の力で俺を睨んできていた。
そこでやっと俺は、自分のしたことを頭の隅まで理解した。
さっきまでうるさいくらい響いていた鈴の音が聞こえない。
その代わり、俺は、自分の血の気が引く音を聞いた。
「・・・一希」
それでも話さなくてはいけない。そう考え、俺は一希の名を呼ぶ。
すると、それを合図にしたかのように一希は立ち上がり、素早い動きで俺の横を通り過ぎ、部屋の入り口へと向かった。
そして、
「悠哉おかしい。何すんじゃ、アホ」
そう言うだけ言って、出て行った。
一希が歩く足音を聞く。俺は頭を抱えた。
(本当、なにやっとんじゃ俺は・・・)
チリンチリンと部屋の入り口から鈴の音が聞こえてきた。
パパイアが俺を惨めに思ったのか、慰めるようにその身を寄せてきた。
※磯部さん、うっかりやっちゃった編。
磯海はこんな定番なノリな感じです。
というより、何故か磯部さんはヘタレだというイメージが私の中に・・・何故・・・?
・・・あぁ!純粋ともいいますね!だからだ、きっと。
瑞垣がひねくれ過ぎてるからいけないんですよ。
この後、海音寺さんは軽く1週間は口を聞いてくれません。
爽やかにスルーされること間違いなし。空気のように扱われるんじゃないんでしょうか。
そんなんじゃいけない練習中は「磯部くん」とか呼ばれ、超他人行儀な話し方で会話されればいい。
で、埒があかないので、3年生仲間に「土下座してでも許してもらえ」って助言を頂き、土下座しにいけばいいな。
果たして、海音寺がそこまで怒るかは不明ですが、そういう展開だったら面白いってことですよ。
よくあるノリですがね(苦笑)
というより、私は磯部さんをいったいどの位置にもっていきたいんだろうか・・・。
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