あいつはズルイ。
俺の気持ちも俺の言いたいことも知ってるくせに何も言ってこない。
それなのに、俺のこの気持ちを突いたり、俺がそれを口にするように仕向けるんだ。
俺もあいつがそれをわざとやってるっていうの分かってるから乗ってやらない。
自分の思い通りにいかないことで、あいつもモヤモヤすればいいんだって思うのに、俺が乗らなくてもあいつはいつも勝ち誇った笑みを漏らす。
反対にモヤモヤするのは俺。
あいつはきっとそれも分かってる。だから勝ち誇った笑みをするんだ。
だけど、そろそろ限界だ。
気持ちを抑えておくのも、口を閉ざしているのも、モヤモヤを感じるのも。
要するに俺の負けか。
溜息が出る。あいつはきっと今まで以上に綺麗に勝ち誇った笑みをするんだろう。
想像しただけで腹が立つ。
「瑞垣」
「何や」
海音寺は瑞垣の名を呼んだだけで、何も言わず顔を背けた。
その顔の眉間には深く皺が刻みこまれている。
「なぁに、一希ちゃん。用があるから呼んだんでしょ?早く言ってくれな気になるじゃない」
そんな海音寺を瑞垣はニヤニヤと笑いながら覗き込んだ。
覗き込まれたことによって、海音寺の眉間の皺は更に深く刻まれた。
「お前ズルイ。ほんま腹立つ」
「何のことか言ってくれな、俊二くん分からんよ」
「嘘付け、全部分かっとるくせに」
「それは買いかぶり過ぎってもんやで、一希くん」
海音寺は諦めたというように息を一つ吐き出し、まっすぐ瑞垣を見た。
瑞垣も浮かべていた笑みを引っ込め、その視線を受け止める。
海音寺が短く息を吸い、飲み込んだ。
「瑞垣、俺、瑞垣の事好きじゃ。誰よりも好き」
口にすると流石に恥ずかしかったのか、海音寺は俯いた。
俯いた頭を見る瑞垣。その顔にはさっきまでの意地の悪いものでなく、綺麗な微笑みが浮かんでいた。
俯いた海音寺の頬にそっと手を添える。そのまま上を向かせれば、朱に染まめ、口を真一文字に閉ざした海音寺と目が合った。
クスっと笑い笑みを深める。
「よくできました」
言って、引き寄せる。固く結ばれた唇にそっとキスを落とした。
こいつは本当にズルイ。
あんな風に微笑まれたら、もう何も言えやしないじゃないか。
※……あーうん…誰でしょう…。
ちょっと乙女過ぎですかね…?そうでもないかな?
たまには海音寺からで!うちのサイト、海音寺からは極端に少ないのでね(苦笑)
あー楽しかった。明日はこれの瑞垣視点を書きたいな。
書いてる途中に思いついたので。
さて、もう寝ます。あ……もう5時間も寝れないじゃねぇかー!!!
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