本気でそういうつもりがないのなら、特別な扱いなんかしないで下さい。
安易に甘い言葉を口にしないで下さい。
単純に俺の心は信じてしまうから。
その扱いにその言葉に甘えてしまうから。
貴方にとって俺は特別なのだと心が思ってしまうから。
お願いだから、その気にさせないで下さい。
離れるのが辛くなってしまうから。
貴方の言葉を聞くのが恐くなってしまうから。
貴方が本気でそのつもりがないのなら、近い将来離れなければならない。
その時、俺の中の貴方への想いが大きかったら、とても辛い。
貴方が望んでも離れられないかもしれない。それは嫌なんです。
自分の心が苦しむのも、貴方が困った顔をするのも。
そして、俺はひどく臆病になってしまう。
貴方の口からいつ拒否の言葉が発せられるか、そればかり気になってしまう。
これまでのように、貴方の言葉に真っ直ぐに向き合えなくなってしまう。
だからお願いです。そのつもりがないのなら、本気でないのなら、その気にさせないで下さい。
辛いんです。もう。
俺がそう願っても貴方はやめてくれないかもしれない。
だから、俺は、俺から自分を偽ることにしました。
自分の本心に目を背け、貴方と向き合うことを拒否する。
分かってる。
目を背け、拒否することは、ただの逃げ。
醜いただの逃げです。
でも恐い。貴方とは向き合えない。
だから、逃げさせてください。もう少しだから。
もう少しで貴方と俺の間には何の関係もなくなる。
毎日会うことも言葉を交わすこともなくなる。
その日が来れば、今のこの時なんて、時の流れの中で薄れていくでしょう。
貴方も俺も忘れます。
その日まで臆病だと罵られてもいい、逃げさせてください。
俺は、何より貴方に拒否されることが恐いんだ。
貴方の口から拒否の言葉を聞くのが恐い。
静寂を保つ部室に雨音が響いた。
その音が中を一層重くさせる。
海音寺は自分より大きな戸村を見上げた。
眉根をよせ、歪む表情の瞳は悲しみから僅かに潤み、大きく揺れている。
だが、その奥には海音寺の強い決意が見えた。
戸村はそれを感じ取る。
今すぐにでも強く抱きしめて、言葉を囁きたい衝動を抑え、海音寺の言葉を待った。
見上げる瞳が一層大きく揺れた。
海音寺が作った拳が、更に強く握りこまれる。
唇が振るえ、ゆっくりと開けられた。
「監督。卒業までもう少しなんですから、それまで今まで通り先生と生徒をちゃんとしませんか。ほら、いきなり態度変わっても変ですし。周りに変に思われるのも嫌でしょう?卒業すれば、監督は俺のことなんて忘れますよ。だから・・・」
言葉を止め、海音寺が目線を逸らした。
おもむろにバックを手に取り、部室の扉へと手を掛けた。
「・・・っ!」
戸村が声を掛けるよりも早く扉は開かれ、海音寺は降りしきる雨の中部室を後にした。
バタリと強く閉められた扉。その音が部室の中に大きく響いた。
嫌になるくらいの雨の音が戸村の頭の中に響く。
海音寺の出て行った扉を戸村は睨みつけように見る。
強く拳を握り、近くの机に叩きつけた。
貴方に拒否されるのが恐いから、貴方から拒否の言葉を聞くのが恐いから、だからその前に俺が口にします。
自分の心を偽って、俺が拒否の言葉を口にします。
その方が楽です。
貴方に拒否されるより、自分の心を偽る方が楽なんです。
大丈夫。貴方に拒否された心は元に戻らなくなるけれど、偽った心はいつか風化する。
だから、大丈夫です。
※さて、どういう状況なのでしょうか。
やはり、ちゃんと整理してメインにすればよかったかもしれませぬ。
悩んだのですが、まとまりそうになかったので、こちらで。
けど、書いてたら長くしたくなったので、メインで書くやもしれません。
・・・どうしよう。
一応考えてた感じは、
戸村が海音寺に気持ちを伝えた。→海音寺も戸村は好いており、嬉しいが素直に受け止められなかった。→どうせ遊びとかそんな感じで。→けど、戸村の海音寺へのアピール(笑)は減らず、海音寺は好きだからこそ困り果てる。→それは、別れる時が辛いから。→いつか別れを言い渡されるくらいなら、最初から近しい仲にはならない。→戸村から別れの言葉を聞くのは嫌だから、その前に自分から言う。その方が幾分楽だ。
ということです。
いやしかし、こんなネガティブな先輩は先輩じゃない!って感じでしょうが、たまにはいいかなと少し思ってしましいました。
うーん。やはり長くしてメインに・・・うーん(悩)
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